零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)

零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)

 航空母艦保有量制限条約の存在と、事実上の空母を「多用途運用母艦」と称して配備する水上自衛軍が同条約の制限枠を専有している状況から実質的に洋上航空戦力の装備化を阻まれていた日本海軍であったが、北極上空の“ナイゼス(リング)”による北半球域の電磁的擾乱環境下においては「ミサイル防空による艦隊自衛」という概念自体が絵に描いた餅状態であることは明らかであって、このため条約制限の抜け道的方策として航空巡洋艦で運用できるV/STOL防空戦闘機の導入が企図されたのであるが、当初試験的に配備されたホーカーシドレー製の艦上機ケストレルは何より亜音速機であることが艦隊防空戦力として性能的に不十分とされ、これに代わる超音速V/STOL戦闘機とすることに加え艦隊戦闘すなわち各種砲熕兵装およびスタンドオフ兵器による攻撃を支援するための前進観測(概念は後述する)を行う機体として設計・製造が行われたのが本機体・零式艦上戦闘/観測機であり、背景としてはレーダー火器管制の信頼性が低下した戦場において相対的に重要度を増した主力艦/戦艦による艦隊決戦を行ううえで必須となる制空権の確保と重火力投射を直接支援するウェポンシステムの一環として作られた機体であるということもできる。

零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
2機の零式艦上戦闘/観測機と、眼下に支援型航空母艦/CVS-181「ひゅうが」。CVSは主任務である主力艦の射撃支援観測と艦隊防空能力の他に対艦/対潜戦闘能力をも有しているが、空母としては小型の部類であることから打撃力や継戦能力・実施可能なソーティ数においても極めて限定されたものとなる。その搭載機と同様にCVSも主たる火器管制機構は電子光学式システムであり、上部構造中央の大型マストにはLiDARを兼ねる大口径レーザー砲架を持つのが特徴。

 実働部隊に配備時点で先述の空母保有量制限条約は既に失効しており軽空母(支援空母)での運用に切り替わっていたとは言え、当初は飛行甲板長120m前後の航空巡洋艦に搭載することを目的とした機材であるため設計の最重要点として機体重量の軽減が図られたのは当然で、なおかつ母艦および帯同する艦隊からの砲撃・投射される精密誘導兵器の終端誘導を行なうため標的の敵艦隊(場合によっては対地目標)防空網に突入した状況で実施するEOTS(電子光学照準装置)+LiDAR型火器管制装置を用いての索敵と射撃管制・照準用レーザー照射は、当然極めて高密度の対空火力投射環境下での交戦であることから特に海面付近高度での高荷重/高機動運動を可能とする高剛性も必須で、それらを両立するため現用機としては珍しい複葉機として作られており本機体の最大の特徴でもある。

 先述のEOTSとLiDAR型火器管制装置/照準用レーザーイルミネータは本機体ウェポンシステムの核となるもので、それぞれ機首下面バルジ内/および下面前方の光学窓内に収容されており、索敵と測距・標的識別と照準を個別的同時に8目標まで行なうことが可能。自衛用モードも備え赤外線もしくは光学誘導の投射兵器を攪乱あるいはその誘導装置を直接破壊するためのレーザー照射も行う(当然機体の前方象限に制限されるが)。

 電磁擾乱環境下では当然のこととして主たる通信/データリンクも光学=レーザーを用いて行われるため、母艦や僚機から発振される交信用レーザーを受光するレシーバーが機体各所に埋設されているが、正確な位置・基数は公表されていない。また補助的な機材として航法および測距を行うことができるレーダーも機首内部に搭載されており、従来の各種脅威識別・妨害装置をはじめとする電子戦用装備も小型の機体で兵装用ハードポイントが限定されることから機内収容式のそれを持つ。

零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
エレメントを組む零式艦上戦闘/観測機。対艦攻撃の前進観測において敵陣からの対空防御を回避しつつ標的に照準レーザーを照射する最前衛機は当然母艦隊から見て水平線下となるため、データリンク連接(電磁擾乱環境下では通常レーザー通信を使用する)を行うには複数機の零式による連携が必要となる。

 パワープラント、「ネ1021」は本機体専用に開発されたもので、後部のベクターノズルを除く全長3.4m、最大径98pのV/STOL用ターボファンエンジン。本体左右に旋回式のリフト用ノズルを持ち、さらにノズルへのフローは通常飛行時に後段オーグメンターにバイパスされる可変サイクルとなっているのが特徴。
 リヒートの使用ができるため超音速飛行に必須となる高速時の推力増強効果が大きく、また可変サイクルとしているためV/STOL時のリフトを可能とする高推力重量比も実現されているが、反面ライフサイクルの点ではやや劣り、何より機体と同様に軽量化を主眼としているため推力に余裕が無いことから、機体の発展性を削ぐ結果となったことも否めない。

 対空戦闘はともかく、機動しつつ防空網へ突入する前進観測任務を考慮した場合本来は複座機が適当だが、軽量化のため単座としたうえでウェポンシステムを極力自動化簡易化してそれを可能としている。とは言えパイロットのワークロードが過大であることは否定できない事実であり、またその点でも拡張性に乏しい機材であったことは論を待たない。

 搭載武装は特例的に対艦ミサイルを使用する場合もあるものの、それ以外は全て対空戦闘装備であり主として88式赤外線誘導弾(ファイアストリークMk.13を国産化したもの)および91式レーザー誘導弾(同、レッドネイルMk.4)を各2発づつ懸吊するのが基本コンフィギュレーション。胴体下ハードポイントには口径20o・4砲身ガトリング砲を内蔵するガンパックとその弾倉を携行することが可能。

零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
リフト用ノズルを斜め下方に向けSTOするCVS搭載機、零式艦上戦闘/観測機1型(ノズルは複葉に隠れ見えないが、後下方への噴流に注意)。CVSの飛行甲板上には空対空用第1種兵装を施した2機の零式が常時待機して緊急発艦に備える。
零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
機首下面に突出しているのがEOTS(統合電子光学照準システム)で、その前方・円形の光学窓がLiDAR/照準用レーザーイルミネータ。従来のレーダーは補助的に装備されているに過ぎず、すなわち本機体の全天候戦闘能力は高いものではない。
零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
母艦に接近中の零式艦上戦闘/観測機。すでにジェットボーンに移行しておりカナードは最大下げ角となっている。本機体は他のV/STOL艦上機と同様、必ずしも合成風速を必要とせずに停泊中の母艦からでも、あるいは悪天候下でも離艦および着艦が可能であることが利点となる。
零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
胴体中央2基のリフト用ノズルを降ろし母艦にVLする零式艦上戦闘/観測機1型、後方では僚機がホールド中。カナードを立てているのはエキゾースト再吸気による出力低下/ストールを防ぐフェンスとして使用するため。2種のAAMを懸吊しているが、本機体の最大着艦重量制限は厳しくブリングバック能力が低いことが短所として指摘されている。
零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
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零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)

ディメンション:全長14.8m  全幅7.8m  全高3.6m  空虚重量 5.6t  最大STO重量 10.6t
エンジン:ネ1021-2号1型  最大推力75.5kN(ドライ)/96.1kN(リヒート)
最大速度:M1.35(高度6,500m)/1,350q/h(海面上)
実用上昇限度:17,100m  初期上昇率7,400m/min
航続距離:960nm  最大フェリーレンジ:1,350nm

 オリジナルの架空の日本海軍艦上戦闘機です。

 名前のとおり現代に蘇った零式艦上戦闘機がテーマですが、艦隊の砲戦を支援する目的の敵観測機排除と制空権確保がそもそもの用途であった先代と同様、主力艦の戦闘を直接支援する機材として設定してあるので名称も戦闘/観測機としました(零観の要素もあるから複葉、というわけでもないではないですけども)。↑の機体解説にもありますが、非常に端的に言って機首に内蔵するLiDARが照射する目標に艦隊からの砲撃と投射兵器が飛んでくるシステムです。
 V/STOL戦闘機としたのはもちろんハリアー好きなのもあるのですが、小型の航空母艦という制限されたキャパシティ内で機能的な航空戦力を形成するというウェポンシステムそれ自体に興味があるという側面もあります。

 スケールは他と同じく1/100、全長およそ150mm。プラ板工作にて原型を作りレジンキャスト複製。複製パーツにさらに手を加えてガレージキットにもしていますが、本頁のモデルはすべて一次原型の複製品です(空撮写真も)。

零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
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零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
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零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
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 エンジンは着脱可能に作っていますが、単純に後方に引き抜くということができないので、上主翼を取り外して降ろします。
 エンジン本体の左右に1対あるのがV/STOL用のリフトノズル。

零式艦上戦闘/観測機(F/A9M1)
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 大きさはこれくらい。大戦機なら1/72スケールが、現用戦闘機だとミニジェット・シリーズが好きなのでだいたいこうなります。

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