試製艦上戦闘機 キ1061
旧陸軍を出自とする日本水上自衛軍は航路制海権の維持を主目的とする海軍とは異なり、本土沿岸および島嶼防衛を主務とする軍組織である。
その兵力の一環として空母(水軍では「多用途運用母艦」と称した)に搭載する艦上戦闘機 より望ましくは多用途戦術戦闘機も必要とされ、従来は海軍と機材を共用していたものの用途と作戦の違いから独自の戦闘用航空機が要求されるに至った。
こうした経緯から試作および運用テストが進められているのが本項の試製艦上戦闘機キ1061である。
甲板長240mほどの軽空母の艦上でも運用が可能な比較的コンパクトなエアフレームに、ペイロードとレンジに優れる可変後退翼を組み合わせて作られており、これも全幅を最小限とする目的で兵装用の小翼(スタブウィングと呼称される)を分けて複葉構造となっているのが外形上の最大の特徴で、こうした機体コンフィギュレーションは戦術戦闘を目的とする開発意図に沿ったものである。
“試製”が示すとおり本機体のウェポンシステムは未完成で、現時点で90式レーザー誘導空対空ミサイルおよび海軍と共用の対艦ミサイル・ブルーガジェットMk-3の運用能力を持つのみ。
66°の最大後退角としたVG翼(駐機/格納時には75°までオーバースウィープが可能)は超低空を高速で航過することに適しており着上陸阻止を主務とする本機体においてもその能力を遺憾なく発揮する。兵装搭載用スタブウィングの採用はVG翼への旋回式ハードポイント設置を嫌ったための措置でもあるが、そちらの下主翼も空力翼として機能し上主翼同様に速度に応じ下反角が可変する(超音速時には90°下に畳む)。ただし兵装懸吊時は上反角2°でロックされ、当然兵装/パイロンなどは緊急的に投棄可能ではあるものの飛行中に下主翼のモードを変更することはできない。
広範囲の飛行領域で最適の揚抗比を選択できる可変後退翼の恩恵によってレンジ/ペイロードにおいても優れており加えて燃料搭載量も比較的多いため通常の作戦時に増槽を必要とすることはない。
最前進位置の22°まで展開した主翼は本機体に優れた離着艦能力を与えているが、一方で展張時およそ16mのウィングスパンに対し主脚ホイールトラックは3m余りしかないため着艦には高い技量が要求される。実際の艦上トライアルにおいても、幅およそ40mの空母アングルド・デッキにこの機体をリカバリーさせるのは比較的至難の技と判明しており、「試製」の字が外れない最大の問題点ともなっている。
後部のベントラルフィンは降着時に左側に畳まれる構造で、着艦フックもその基部に内蔵されている。
下主翼下外舷(右)のSt?8から対艦ミサイルASMブルーガジェットMk?3をリリースする試製艦上戦闘機 キ1061。レインボーコードが示すように英・ヴィッカース製のシースキミング型対艦ミサイルで、中間誘導は慣性航法/終端誘導は内蔵レーダーにて行う。ターボジェット推進で速度M0.9、射程およそ70海里。
機首下面のバルジ内には統合電子光学照準システムおよびLiDAR火器管制装置が収納されており、索敵と測距・標的識別と照準を行うほか赤外線もしくは光学誘導の投射兵器を攪乱あるいはその誘導装置を直接破壊するためのレーザー照射を行う自衛用モードも併せ持つ。機首先端部には小型レーダーも搭載するが、そちらは航法/測距に用いるのみ。
外部兵装用ハードポイントは下主翼下に4ヵ所+胴体下に4ヵ所。胴体下中央側の2ヶ所は90式レーザー誘導空対空ミサイル専用のコンフォーマル型/半没式ステーションで、パイロン等を要さずにAAMを直接射出できる(他のミサイル類を懸吊する場合はランチャー/パイロンなどを増設することも可)。
水軍においては艦上運用テスト中の本機体であるが、一定のSTOL性能を有するため使用機材を共用する日本空軍では分散配置防空戦闘機 三式邀撃戦闘機「飛燕II」として先行採用・運用している。同様に現状でその兵装搭載能力は充分とは言えないが、ウェポンシステムとして完成をみた時点で各種戦術攻撃用兵装の搭載が可能となる計画で、名称が示すとおりにディジグネーションとしてFA-3F/Rが充てられる予定。
オリジナルの架空の艦上戦闘機その2です。
零式艦上戦闘/観測機を作った際に、これとは対照を成すCATOBAR艦上戦闘機もあった方が……と考えて造った機体です。
艦隊砲戦を支援する海軍のV/STOL機・零式とは異なる、陸軍を出自とし本土・沿岸および島嶼防衛を行う"水上自衛軍"の戦術戦闘機として設定してあります。軽空母クラスで運用される機体なので比較的小型・単発/単座で、しかしペイロードやレンジは要求されるだろうから、それらの点で優れるVG翼で……という辺りでデザインしました(VG翼戦闘機としてはフロッガーが好きなので、その要素も入れたかった)。
スケールは他と同じく1/100、全長およそ160mm。プラ板工作にて原型を作りレジンキャスト複製したガレージキットでもあります。
↑↓ガレージキットでもエンジン別パーツになっていますが、取り外し式とするには上下分割の胴体と機首を分解可能とするよう追加工作が要ります。
いちおう、設定ではロールス・ロイス製R440、ファン入口径86p×本体長4.5mの低バイパスターボファンてことになっていますが、重量が嵩みがちな可変翼機なのにエンジンは比較的小直径、機体に比してアンダーパワーってところはどこかの人気機体と同じ(可変翼機に対する先入観)。
↑大きさこれくらいです。いつもの1円玉との比較。
↑コードネームが「飛燕II」なので、先代飛燕と比較。飛燕も主翼の設計に特徴があった機体なので、その意味でも後継機として可変後退翼を採用することは……って、ちょっと苦しいが。