啓開/嚮導機Σignal DDSV

恒星間空域用航路啓開/嚮導機・用語集



用語50音順

    【あ~お】

    • 超空間(アウタープレーン)

      「超空間」となっているが、厳密には座標により定義される拡がりを持った「空間」ではない。ここでは、三次元的な座標や位置、距離といった概念は意味を成さず、同様に時間の広がりも存在しないことになる。
       すべての物体・事象は通常空間のそれが投射される形で存在し、これを操作することによって超空間/それが投射される通常空間における移動/航行が成立する。

    • 遷移空間切断機(アウタープレーン・カッター)

       超空間(アウタープレーン)を介する超光速航行を行うための推進器である。しかし「推力」とは言っても、物理的な「推進させる力」というものではもちろん無く、実態としては空間操作の一種。超空間内に転写された通常空間(と、そこに在る物体/機体)を文字どおり遷移させることで移動を成立させる仕組み。
       空間そのものに干渉・操作する機構を持つ装置であるため、その製造には特殊な環境・条件が必要であり、TFVの船内で製造や複製を行うことはできない。

    • 船外作業(アーキ、アーキタイプ)

       恒星船(T F V)の船員の中でも、各種船外作業機に搭乗して航路および船体の維持作業を担う者の呼称であるが、通常は航路啓開/嚮導機パイロットを指す(その他の作業機械は、ほぼ完全に無人化されているため)。
       神経系/運動機能/代謝系その他に著しい改造を施されているのはTFV船員に共通しているものの、その中に在って比較的原・ヒトに近い精神構造を持つ(とされている)ため、“原型(アーキタイプ)”の名が付いている。

    • アクティブ超空間センシング

       座標・位置・距離といった概念を持たない超空間内の物体は、通常の三次元空間的な探査では検出できない。ここで行われているのは、質量と速度を持った物体が超空間に与える歪みの検知であり、大質量/高速の物体であるほど遠方での検知が可能となる。
       検出そのものも、一種の空間操作・能動的なプロセスであり、この性質上、超空間での観測はすべてアクティブ。パッシブのセンサー、などというものは無い。

    • アラート

       前哨機(ピケット)の航路センシング/航路障害検知は、すべて航行電子脳(および、その上位に位置する戦術電子脳)が統括するセンサー・アレイに拠っており、通常、船員がこれに介在することはない。
       障害物の探知、種別の判定、およびそれへの対応指針なども、すべてあらかじめ設定されたプロトコルに基づくものであり、船員が介在するのは、原則としてイレギュラーの事象に対するものだけとなる。

    • アンカー

       啓開/嚮導機、およびその他の船外作業機が持つ、母船(ヴェッセル)修復・補給艦(サプライア)などに接舷/着底するための脚。原則として共通の規格を持ち、一基でも機体の全質量を支える堅牢さを備える。

    • アンロード

       恒星船(T F V)の乗員に対して行われる、意識・記憶および情動を含む人格そのものの洗浄処置。極端な閉鎖環境、無重量状態、通常空間ではない船外、その他の環境要因は、ヒトの精神を狂わすには十分であり、加えて少数の、固定化した人間集団が及ぼす悪影響も無視できない。
       それらに対して行われるのが、定期的な人格のフォーマットおよび調整であり、TFV船員の精神構造は、任務に最適化しうる形で均質化される。

    • 殲滅機関(イレージング・エンジン)

       人類が死滅した地球上、厳密にはその軌道上の巨大テザー衛星を管理していた第七世代人工知能がその出自となる、恒星間空間に拡散する/拡散し得る人類を殲滅・除去するための自律自動機械群。
       地球の住環境を回復不能なまでに毀損した人類は、外宇宙に進出したとして同様の行動原則を継続するものと認識しており、これを殲滅し排除することを至上行動規範として持つ。同種の人工知能、それが集簇したシステム、あるいはそれを内包する戦闘機械は、すべて総称して「殲滅機関(イレージング・エンジン)」、もしくは単に「エンジン」と呼ばれる。

    • 六角柱状の物質塊(インゴット)

       恒星船(T F V)母船(ヴェッセル)が複数本を牽引する、航行中に必要となるあらゆる物質を供給するための巨大物質塊。母船とほぼ同じ長さまで伸長されることもあるが、航行と共に消耗する要素でもあるので、航続や補充の状況によって長さは異なる。物質塊(インゴット)の先端には工作・加工プラントが接続され、必要物質の切り出し/逆に補充した物質を圧縮成形する作業もこれが行う。
       プラントでは空間操作による元素転換を行うことも不可能ではないが、通常は転換効率を重視するため、物質塊(インゴット)は複数種の元素をレイヤー状に配置、成形された構造を持つ。

    • 刷り込まれた任務(インプリント)

       恒星船(T F V)の船員は、すべて遺伝子レベルで改造を受けた、外宇宙航行に適した調整人間/マンマシーン-ハイブリッドである。調整はハードウェアとしての身体だけではなく、精神構造にも及んでおり、容易にフォーマットが可能な均質な人格が設定され、また可住環境の惑星を探査・検出し、発見したそれを改造する、という任務は、原則として出生時すでに組み込まれた精神の根幹を成す。行動選択の優先度においてそれは如実であり、通常、自己保存よりも任務を優先する、という傾向を見せる。

    • 母船(ヴェッセル)

       恒星船(T F V)の基幹となる、その全長数十キロから、時に100㎞を超える規模の巨大宇宙船。作中のそれは、紡錘形をした、ほぼ積み荷のみで構成された実質輸送船のような形態であるが、これは進発時期によって大きく変遷したものの一例に過ぎず、船体内部に可住環境を備えた世代型宇宙船や、航路維持・探知に特化した「大型の前哨機(ピケット)」という形式、あるいは、発見した惑星の軌道上にそのまま留置できるような工作船の形態を持つものもある。

    • エンジン

       →殲滅機関/イレージングエンジン

    • 惑星改造用自動機械(オービタル・テラフォルム・オートマトン)

       恒星船(T F V)が積載する惑星改造用の自律自動機械である。その本体は、惑星の質量が及ぼす重力勾配という環境下で空間操作によって物質・元素を転換し、生成した物質を適宜加工し散布する機構。
       この機能によって、惑星大気をそっくり別の元素構成に変換するなどという改造も可能となる(とは言え、時間的な要素は別ではあるが。および、惑星が持つ物質総量を変更するものではとうぜん無い。すなわち、系外惑星の条件としては、質量および表面重力加速度が最も重視される)。

     

    【か~こ】

    • 火器

       恒星船(T F V)前哨機(ピケット)が備える、航路障害を除去するためのデバイスは、通常空間用/超空間用でまったく異なる作動原理に基づいている。前哨機はその双方を装備し、通常空間で使用するレーザー砲や粒子ビーム砲、あるいは実体弾兵器も搭載する。
       それに対し、啓開/嚮導機は、原則として超空間内で用いる、空間操作技術による攻撃兵装のみを装備する。通常空間内で従来型の兵器を用いる状況も考慮されていないわけではないが、あくまでも例外的な運用である。

    • 格闘腕

       啓開/嚮導機の作業用外肢。きわめて堅牢に造られており、脊柱と同様に、メインフレームは物質ではなく空間操作による偽物質。ために、基幹骨格は物理構造として極めて強固で、その性質を生かして文字どおり「殴って破壊する」ための鈍器でもある。

    • 機動円錐

       超空間内を超光速で機動する啓開/嚮導機が示す機動パターンは、それを頂点とする円錐形で示され、またそのような形で感知される。
       速度や運動性によって、その形はある特徴を示すことが多く、また、それに基づいた機種の推定も行われる。というよりも、超空間内では、機体を点として識別することは不可能であり、ある意味では機動円錐そのものが、超空間内での啓開/嚮導機の姿である、といっても間違いではない。

    • 機内の時間は加速され

       恒星船(T F V)や周囲の前哨機(ピケット)、およびそれから射出される啓開/嚮導機の船内・機内時間は一定では流れない。極微の時間で膨大な処理・行動選択を必要とする超光速機動では、機内の時間そのものを加速させて状況の変化に追従させる。
       時間加速率は機体の性能や機能によって異なり、それは絶対的な“飛行速度”とは別の基準での、機体の速さ、として表される。

    • クルーズキャビン

       啓開/嚮導機に装備する、長躯航行用の乗員装備。コクピット・シェル左側のエアロックに直結して接続され、内部には乗員一名用の居住空間があるものの、人工冬眠ユニットその他のデバイスも並置されているため、有効空間は約1.5m³しかなく、「個人単位の生命カートリッジ」などと評した方が実態に近い。
       また、長躯航行を行う場合は、クルーズキャビンの対側、コクピット・シェル右側に再生・転換装置、通称「クルーズドライバ」を接続、一対は通常セットで運用される。

    • 光化/鋼化神経処理

       調整人間である恒星船クルーの神経系は、その仕組みから原・ヒトとは異なっており、最も端的なのが神経線維の構造。神経伝達物質と軸索誘導による伝導ではなく、疑似光回路による光速の伝達を行う。これによって、神経伝導速度の向上が図られており、補助脳による並行するエミュレート、および機内・操縦系の時間加速と合わせて処理と判断の高速化が実現される。
       特に啓開/嚮導機パイロットに於いて、この神経処理の適用が顕著で、精度と速度に於いて他のタイプを凌駕する。

    • 恒星間空域用超光速航路啓開/嚮導機(パスファインダー/アウトライダー)

       超空間を超光速で航行する外宇宙船の航路維持には、進路上・一定以上の重力場を持つ物体の排除が必須であり(これは、単に衝突する、という簡単な問題ではなく、超空間の構造自体が不安定化して航行に支障を来す、最悪の場合、船の周囲の空間ごと崩壊する、という危険性に対処するものである)、この目的のため専用の船外作業機が作られた。これが、現在の啓開/嚮導機のルーツである。
       必要とされたのが、高速性、迅速に航路障害を検出・測定し、それに応じた排除手段を豊富に持つこと。および、母船の前方で長時間にわたって活動できる航続距離/航続時間を有すること。整備性が良好で、なおかつ必要物資は少ないこと。以上のような要求が、余剰容積を徹底的に削いだ、骨格+積層パーツが集合したようなシルエットを生んだ。

    • 一四式恒星間空域用超光速航路啓開/嚮導機 Σignal DDSV-14「翆鴒」

       進発年次140年代に設計・製造された航路啓開/嚮導機としては標準的な機体コンフィギュレーションを持つのが本級一四式/DDSV-14であり、パワープラントをユニット化して組み込むドライブモーター・ナセルを二基接続する双発機であることが特徴の一つ(同時に、本級のような二基の出力系が併在するパワーマネジメントは、その制御がきわめて困難・複雑化するため、汎用性・整備性の点ではやや劣り、採用例は少なく、150年代以降ではほとんど例を見ない)。
       双発機である故、出力重量比は他の嚮導機の比ではなく、巡航速度の点で本級を凌駕する機体はほぼ存在しない。また、発動機総出力の点でも群を抜いており、6基以上の超空間装備を同時使用できるのも、本級だけである。
       とは言え、一四式そのものが黎明期にある航路嚮導機の諸機能および各種装備の実証試験を行うためのテスト機としての性格が強かったこと、生産性も良好とは言えず実際の完成機体は僅少。
      ※「翆鴒」は、準個体名である。「一四式」と一括りに言っても細部の仕様は異なっていることが多いが、それとは別に配備先の恒星船内で識別を容易とするよう、生産ロットとは関連無く機体名は複数から選ばれる。これは、他の啓開/嚮導機でも同様。例えば、本項の「翆鴒」は厳密には「翆鴒6号機」、となる。

      • 形式:霞朱エレクトリック製航路啓開/嚮導機・PFOX-DDSV
      • 主要諸元:
        • 全長:27.6m
        • 全幅:24.2m
        • 全高:12.6m
        • 最大慣性質量:1310t(兵装除く)
      • 兵装(第一種航路啓開兵装):
        • 主砲:220㎜/97口径超空間衝撃砲 ホ5031 x1~2
        • 副砲:176㎜/50口径超振動砲 ホ406 x1~2
        • 近接兵装:斬撃・投擲用ブレード x2
    • 一七式恒星間空域用超光速航路啓開/嚮導機 Σignal DDZM—17「炷鶏」

       現行の航路啓開/嚮導機としては、標準的な構造・仕様となっているのが本級一七式/DDZM‐17。単基のパワープラント+ドライブモーター二基という構成は、汎用性と拡張性、および安定性に於いても優れており、嚮導機全般で同様の機体設計が一般化している。
       中でも一七式は高出力の基底空間操作/超弦励起光波機関(サブストレート・エクストラクタ)を搭載し、加速性能に優れるドライブモーターと組み合わせることで高い機動性能を得ている。堅牢で、より合理化された機体構造を持ち、整備性はもとより、生産性を向上させるための簡素化・簡略化も適宜取り入れられている。ゆえに生産数は多くありながら、基本的に細部仕様に差異がある実質ワンオフ機が多い啓開/嚮導機の中に在って、比較的均一な仕様に統一されているのも本級の特徴。
       明確なバリエーションは2種のみで、ドライブモーターの形状が異なっている。「炷鶏」も準個体名で、この名称の一七式も、本TFVには一機のみ。厳密には、「炷鶏22号機」である。

      • 形式:雁䟽重工製航路啓開/嚮導機・PFOX—DDZM
      • 主要諸元:
        • 全長:31.5m
        • 全幅:21.6m
        • 全高:11.2m
        • 最大慣性質量:1390t(兵装除く)
      • 兵装(第四種航路嚮導兵装):
        • 主砲:176㎜/50口径超振動砲 ホ406 x2
        • 副砲:140mm/70口径超振動砲 ホ571 x2
        • 近接兵装:斬撃・投擲用ブレード x2
    • 一八式恒星間空域用超光速航路啓開/嚮導機 βidodt SVGC—18「緋鶄」/「統鶄」

       啓開/嚮導機としては比較的小型で、単発・単基、すなわちパワープラント1基+ドライブモーター1基の組み合わせ。もとは嚮導機であった機体をアップグレードしたもので、機体構造は比較的簡素、汎用性もさほどではないが、生産性に優れる。軽量の機体に一七式と同型の基底空間操作/超弦励起光波機関を搭載するため、出力重量比に於いては「翆鴒」に次ぐ。

    • 恒星間へ拡散する人類殲滅用超光速機動戦闘機/G.T.

       殲滅機関(エンジン)が設計・製造する超光速機動戦闘機は、啓開/嚮導機と異なり、脊柱状のメインフレーム+多数の作動肢を有する機体構成を取りつつ、全体的には人型に近いシルエットを形成する。
       これは鹵獲したマンマシーン・ハイブリッドをコアとして組み込んだG.T.に於いてもまったく同様であるが、概ね、従来の殲滅機よりも大型の機体規模を持つ。
       搭載する武装もG.T.では、より啓開/嚮導機に近くなっており、近接用兵装としての斬撃・投擲用ブレードも持つ。

    • 航路障害

       超空間における超光速航行では、航路障害物の概念が通常空間におけるそれと異なっている。それは単なる障害物=物体ではなく、基本的には「それが及ぼす重力場に基づく超空間内の擾乱」である。
       通常空間内・物体の質量はその大小に関わらず超空間の(非)構造に影響を与えるが、一定以下の質量によるそれ——例えば星間塵やガス、小規模な岩塊などは事実上無視し得る(超高速で航行する機体に影響しない)もので、実際の航路障害とは、凡そ小天体以上のサイズの物体が該当する。

    • 骨盤

       嚮導機、もしくは啓開/嚮導機が備える、作業用作動外肢を支持する翼状の構造物。通常は左右一対だが、機種によってはサブフレームによる補強がなされており(一四式など)、機体設計の特徴が現れる箇所でもある。
       翼端はハードポイントとなっており、多くの場合はシールド発生器が装着されている。また、同部分には大型の航法灯を備えるのが共通するデザイン上の特徴だが、もちろんそれは、超空間にて視認されるようなものでは無い。

    【さ~そ】

    • 叉骨

       嚮導機、もしくは啓開/嚮導機の脊柱に接続される基幹構造の一部で、大型で重いドライブモーター(翆鴒では、パワープラント+ドライブモーター)を懸架するための可動式のマウント。
       多くの場合、叉骨内部には機体が通常空間にて使用する動力を供給するための補機/サブジェネレータ(対消滅機関)が内蔵されており、また、これがあるため、啓開/嚮導機は主機である超空間ドライブモーターが無い形態でも、通常空間内であれば亜光速で機動が可能、稼働することができる。

    • 基底空間操作/超弦励起光波機関(サブストレート・エクストラクタ)

       端的に言えば、空間そのものからエネルギーを取り出す技術である。ただし、その出力は超空間の非構造内部でしか取り出すことはできず、また利用することもできない。超空間への遷移、および超光速航行、空間兵装にしか使えない、と言い換えることも出来る。
       その製造方法も特殊な空間操作によるもので、よって巨大な重力勾配が存在する場所でしか行えず、簡易に言えば、惑星上もしくはその近傍でしか生産することはできない。

    • 修復・補給船(サプライア)

       恒星船(T F V)では、規模にもよるが通常、前哨機10機に対して1隻程度配置される、各種の通常整備からオーバーホール整備もこなす工作船。船体規模は大きく、前哨機を収容して修復や改装、拡張を行うことができる。前哨機に露天繋止される啓開/嚮導機の、本格的な整備を行うのも修復・補給船の船内となる。

    • 操船/司令(サプレッサ/サプレッサタイプ)

       恒星船(T F V)の操船、航路の探索、可住環境を持つ惑星の検出、および航路の維持・障害排除の管制などを行う前哨機の乗員。とは言え、それらについての諸機能は通常、人工知能がその殆んどを実施するため、操船/司令(サプレッサ)の役割は実際のところ「確認し、指示する」という立ち位置に近い。もちろん、人工知能では対処できないイレギュラーな事象に対しては、操船/司令(サプレッサ)が判断を行う。
       無重量環境下、さらに耐加重スタビライザーが完備された船内で活動するため、概して小柄・痩身である。また、マンマシーン・ハイブリッドの中では、もっとも人格と情動の表出に乏しく、高速言語による圧縮された意思表示と相まって、近寄りがたく、近寄らない。

    • 斬撃・投擲用ブレード

       啓開/嚮導機(および、G.T.)が多くの場合その主兵装として装備する、名前のとおりの斬って投げるための刀剣である。偽物質によって成形されており、従って超質量密度は現実の物質としてあり得ないほど大きいを持ち原理的に破壊不能の物性。故に戦闘時には極めて強力な近接/打突用武装となる。
       超光速戦闘時の超空間内では、このブレードで斬撃を放つことにより質量波を生じさせ、それによって「斬る」ことも可能。もちろん、直接打撃する場合でも強大な破壊力を持つ。また、このブレードは通常空間に於いて亜光速飛行を行う場合、そのまま投擲すれば強力な運動エネルギー兵器としての使用も可能。ただし恒星船(T F V)では、貴重な偽物質を「投げ捨てる」ような用法は、通常選択されない。

    • 実空間に投射した仮想的な距離

       座標を持たない超空間内では、物体の位置は仮想的にそれを通常空間に置いたそれと見做すことで確定する。複数物体間の距離も同様であり、例えば「相対距離4000光時」と言ったところで、それぞれの速度と質量に依存して変動し、常に一定ではない。

    • 周囲の超空間が擾乱され

       通常空間に在る物体が超空間に及ぼす影響は、その質量と速度に依存する。物体が大質量であれば、もしくは高速であれば超空間内に観測可能な歪みを生じさせ、その規模から質量/速度の推定が為される。
       なお、この質量/速度の関係は、完全ではないにせよ相補的であり、よって「ある質量の物体に超空間内で特定の機動をさせ、見かけの擾乱を意図的に制御する」、そのような対象物は超空間内部で不可視化、とまでは行かずともそれに近い状況を発生させることができ、また戦闘機動としてそれを利用する戦技も存在する。

    • 生態系の種子

       人類が生存可能な可住環境を持つ、あるいは惑星改造によってその条件を満たす、いずれかの惑星環境であっても、既存の地球産動植物が定着する可能性は通常、高くない。従って、どうするか。恒星船(T F V)に積載されているのは、地球から移送してきた動植物相ではなく、その遺伝子操作をきわめて容易とするよう調整・改良されたそれらの胚である。
       手順としては、対象の惑星環境の精査、定着可能と思われる動植物相の推定・同定。それに適するよう、遺伝子操作を実施し、初期の増殖/繁殖、試験的に散布、検証の後に本格的に導入、という過程となる。もっとも、現在のところ、成功例は存在せず、手法として適切であるか否かは不明である。

    • 戦術電子脳

       恒星船(T F V)に搭載されている各種の人工知能は、第六世代の光電子システムを基盤としており、内部に可動部分はおろか、形成された回路というものも存在しない。故障・機能不全に対して抗堪性を持たせるための設計であり、同時に船体構造そのものに分散して記述することにより、冗長性を確保する目的もある。
       戦術電子脳は、前哨機(ピケット)の人工知能システムでは最上位の階梯で、操船/管制/探査/船内維持の人工知能システムをオーバーライドする権限を持つ。

    • 戦闘単位(エレメント)

       超光速での機動戦闘でも、太古の空戦から続いている戦闘教義は維持されている。すなわち、2機一組を基本単位として、必要に応じてその基本単位を複数組ませる、という方式。これは戦闘状況だけではなく、通常の航路維持作業や航路障害排除に於いても全く同様で、常にバックアップが存在することが基本になり、2個以上のエレメントが投入される。単機での射出、航路作業というのは、原則としては異例。

    • 船内環境(ホルダー/ホルダータイプ)
      恒星船(T F V)船内の機能・構造を維持し、必要に応じ補修・修復、および必要時には機能や容積の拡張をするなどの作業を行う人員。当然、船内の構成人員中では最多を占める。実際の修復・維持作業は自動機械がその殆んどを行うため、彼らの業務としては、その監視・監督といった内容に近い。とは言え、実作業に耐える身体性が最低必要条件であることから、肉体的には最も原・ヒトに近い姿を持つ。

    • センシング

       →アクティブ超空間センシング

    • 総体的なイメージの形象

       マンマシーン・ハイブリッドが機械とやり取りするデータは、単なる図形・映像や言語、触感などといった個別の感覚に基づくそれではない。特に補助脳が介在するノイマン型機械との接続では、データは視覚や聴覚・触覚を介することなく「すでに知っていた」という認知をさせるものであるため、ここで言う「イメージ」も図像ではなく、「形象」も、形ではない。

    • そこに在る人間ごと

       殲滅機関(エンジン)は根源的な自己保存の意思を持たず、謀らず、欺かず、悪意を持たず、殺意も発現しない。しかし、殲滅の効率を上げるという行動原則が既存のものとして存在するため、それらの「意」を外注したとも言える。特に殲滅機関(エンジン)によってその母船や座乗する機体を破壊され、自身の肉体も損壊される/損壊された乗員の恐怖は、容易にそれらの悪性が直結する情動を惹起し、それを取り込んだことによって殲滅はより効率的に効果的に行われる。
       マシーンのコアとして取り込まれた船員達は、こうした情動を誘導する神経刺激に常に暴露される状態に置かれ、G.T.が必要とする殺意を表出させる。言ってみれば、「殺意を発生させる機器」。

     

    【た~と】

    • ダイレクテッド

       恒星船(T F V)内部のあらゆる必要なシステムは、その乗員と有線/無線によって常時接続された状態にある。そのインターフェースは彼らに埋設された錐体補助脳(ピラミダ)が担うが、特に転送速度と精度を保証するために有線接続を行う場合があり、それは「締結/ダイレクテッド」と称される。
       通常、補助脳が埋め込まれた側頭部/耳介の後ろ辺りにそれと直結した接続用ポートが設けられておりそれを利用するが、体性感覚路の途上(位置的には手首/足首辺り)にもポートが存在し、必要に応じて利用される。

    • 探測・航路観測

       超空間内にあって、同じ超空間内部および通常空間を走査する場合、感知し得るのはその質量のみ(正確を期せば、質量と速度)。
       ゆえに、通常空間に存在する惑星、その種別、さらには表面の環境……などと言った情報は取得するのが原理的に不可能であり、その規模や軌道、周囲の天体との相関などによって推測を行うのが実際。航路障害、もしくは敵性物体についても同様で、質量と速度によって物体の種別の推定が行われ、敵性体に関してはその行動も考慮した解析を交えて形式の識別が行われる(行動を「読む」ことの重要性、などと言うこともできよう)。

    • 超空間破砕砲

       別名、「アウターフェーズ・ディスインテグレータ」。空間操作技術を応用した超空間兵装であり、空間(非)構造そのものを破壊することによって、遷移空間を周囲に纏う物体の破砕、および重力場の擾乱によって超空間にそれ自身を投射する通常空間内の質量物体も破壊する。超空間位相の変動を励起・増幅して振動を生じさせ、これを砲弾のように打ち出す兵器。規模や威力によって超振動砲/超空間衝撃砲、などと種別されるが基本的にはすべて同一原理による。

    • 超光速機動参照点

       座標という概念が無い超空間にあって、機体の位置を検出するには通常空間とは異なる仕組み・アプローチを要する。要となるのはここでも質量(と、その重力場による擾乱)であり、大質量の母船との相対“位置”が利用される。
       恒星船(T F V)の基本が、「機能を持たない巨船」+「機能を分散した小型機」という形式を取り易い理由の一つがこれである。

    • テラフォーミング・ヴェッセル

       恒星船(T F V)が考案され、コンセプトが策定され実際に建造が行われ、最初の船団が太陽系から進発したのは、現時点のおよそ200年ほど以前のことである。
       ヒト/人類が、根本的には地球環境と一体化した生態構造・機能を持つ以上、可住環境と思われる系外地球型惑星が運良く発見されたとして、直にそこへ移住できる可能性はむしろ極微であることは、それ以前に試行された幾つかの惨めな失敗が補強したこともあって当初より考察されていたことで、大規模な系外移住を実現するには、何を置いても惑星改造技術の開発と改良が急務とされた。
       同時に、濫用される空間操作技術による地球環境の劣化は加速的に進行していたため、改良の途上で「その時点で最良と判断された」船団を建造、逐次進発させるという、控えめに言ってもかなり“特攻的”な運用が基本にあったことも事実である。個々の船団は、他とは分離・それぞれ孤立した存在であり、原則として相互の交信や情報の交換は行われていない。

    • 凍結された受精卵

       恒星船(T F V)の主目的である移住のための人類は、肉体・精神に改造が施された船員達とは異なり、基本的には原・ヒトそのものである。これは原種としてのヒト保存・維持する、などという思想によるものではなく、もっと即物的な理由。すなわち、移住先である改造された惑星に適する生態機能を獲得するための遺伝子改良を行う余地を残すためで、遺伝子プールの多様性とともに、この「遺伝子改良の余地となる、ヒト遺伝子の盤石性」も選定基準として設定された。
       なお、この「改良の余地」という視点で見れば、可住環境化された惑星に船員達が居住・生存できる可能性は、きわめて低い。

    • ドライブモーター

       →遷移空間切断機(アウタープレーン・カッター)

    【は~ほ】

    • ハイバネーション

       恒星船(T F V)の乗員、原・ヒトから遺伝子改良・肉体(および精神)改造を施された彼らは、長期間の閉鎖環境・船内環境に適応するための機能として、任意にその生体機構を人工冬眠させる機能を有している(原則として、特殊な機器・設備は要さない)。もちろん、きわめて長時間を想定した人工冬眠に於いてはその限りでは無く、場合によっては拡張した生命維持装置を併用することもある。単に「ハイバネーション」と言った場合は、しかし彼らに本来備わった機能を指すことが多い。

    • ハイバネーション容器

       啓開/嚮導機の人工冬眠装置には2種類あり、コクピットシェル内部の簡易的な装置、およびクルーズキャビン内部に設けられた長躯航行/長時間用の装置がある。「ハイバネーション容器」と言った場合、普通は後者を指す。

    • パワープラント

       →基底空間操作/超弦励起光波機関(サブストレート・エクストラクタ)

    • 光だって差さないのだから

       超空間内部は座標・位置・距離といった通常空間の物理は存在せず、また光波の媒質そのものが存在しない。船とその周囲は遷移空間として独立しているため、この領域でのみ視覚は成立するものの、それも急速に減衰してしまうため距離のある物体を視認することはできない。超空間内の景色は、「明るいとも、暗いとも言えない、形容しがたい空白」といった様相を呈す。

    • 前哨機/ピケット

       恒星船(T F V)の要素のうち、もっとも多様性の富むのが前哨機(ピケット)である。進発年次によって、その形態や規模、機能は大きく異なり、また、航行中に改装や拡張、大幅な設計変更が為されることも珍しくはない。平時の航路障害除去は、むしろ前哨機(ピケット)自体が実施することが多いため、機能的な改良や適応、といった要求は随時存在する。

    • 前哨機(ピケット)ギュンターシェルヒ

       やや旧式の、シェルヒ級前哨機(ピケット)。全長211m。前方に開いた音叉のようなシルエット。開溝部は、そのまま嚮導機を懸架するガントリー/兼レール・カタパルトとなっており、通常は2機を繋止する。自身も、高火力を持ち、通常の航路障害であれば、嚮導機を展開することなく除去できる。定員は、司令区画に3人、船内環境(ついでに、嚮導機の維持・整備)に6人。ただし現状、司令2人、船内環境に2人と減数されており、補充のあてはない。シェルヒ級は、船団内ではこのギュンターと、もう一隻「アンブラーシェルヒ」のみ。

    • 前哨機(ピケット)ヘルダダナイシュ

       ダナシュ級前哨機(ピケット)。通常恒星船(T F V)の所属船は、可能な限り均一化・標準化されており、実施された改装・拡張も順次すべての構成船に適用される。運用上の相違や錯誤を生まないための思想で(これは、その乗員についても全く同じことが言える)、船団ではシェルヒ2隻以外はすべてダナシュが占める。

    • 錐体補助脳(ピラミダ)

       恒星船(T F V)の乗員が例外なく埋設している補助脳は、端的に言えばマンマシーンインターフェースの主たる要素であり、人間の脳というウェットウェアと、ノイマン型システムを接続する変換器でもある。
       また、補助脳内部では、本人の人格がエミュレートされ、これを加速することで、高速思考を可能としている。補助脳は側頭骨の錐体に組み込まれており(これは、出生後に埋め込みが行われる)、ために通常、有線のインターフェース・ポートは、耳介のすぐ後ろに位置する。

    • フェンス

       啓開/嚮導機が実施する、航路障害に対応する探索・測距・機動および各種手段による排除、そのオペレーションのこと。

    • 武装腕

       啓開/嚮導機の作業用外肢、各種の外部装備や兵装をハンドリングするためのそれ。格闘腕とは異なり、偽物質のフレームは組み込まれていない(いたずらに機体重量を増やさないため)。

    • ブレードホルダー

       一四式「翆鴒」および一七式「炷鶏」は同型のシールド発生器兼ブレードホルダーを翼端アタッチメントに装備している。楔型の防盾・内側には、その全面に装備・兵装懸吊用のレールが張り巡らされており、必要に応じて各種武装を取り付けることが可能(とは言え、ここで想定される兵装は、主に通常空間にて使用される実体弾/質量兵器やエネルギー兵装であるため、超空間戦闘に於いては殆んど用いられることは無い)。

    • 分解炉

       修復・補給船(サプライア)内部に設けられた、物体を原子レベルに解体して再利用するための設備。ここで処理された物質はインゴットに添加できる形に加工され、充填される。恒星船(T F V)の各船にも、同様の設備はあるもののそもそも規模が違い、船外作業機や啓開/嚮導機のような大型の機材——必要無くなったそれらは修復・補給船(サプライア)に送られ、資材として還元される。

    • 閉鎖されたシステム

       啓開/嚮導機に限らず、恒星船(T F V)の設計基幹は「ブロックごとに密閉」である。閉鎖系とすることで、必要な生命維持機能を最小限とし、独立した冗長系を形成し、効率と生残性を向上させている。
       具体的には、操船/司令(サプレッサ)と、船内環境(ホルダー)は、特に必要なければ、前哨機(ピケット)の船内で顔を合わせるということが無い。乗員それぞれの居住空間も、可能な限り距離を離されている設計で、なおかつ、機能に支障が出ない範囲でそれぞれ分離されている。

    • 176㎜/50口径超振動砲「ホ406」

       啓開/嚮導機用の標準的な超空間兵装。全長18mの巨大な砲で、その内部には超空間振動を封じ込めたコンデンサを内蔵する。そのため、作動動力は半ば機体からは独立しており、よって2挺装備、4挺装備といった重武装も可能としている。

    • 220㎜/97口径超空間衝撃砲「ホ5031」

       一四式が主砲として装備する超空間兵装。ホ406とは対照的に、この砲はおよそ20m長の砲身+砲機関部ほぼそれのみから成っており、出力・制御系は機体側のそれに依存している。超空間位相振動を発生させ、撃ち出すためのただの筒、などと形容できる構造であるが、これは砲身寿命が極端に短いことから、交換・再利用を効率よく行うための設計。

    【ら~ろ】

    • 回収作業(リカバリー)

       射出された啓開/嚮導機は前哨機のレール・カタパルトに再接続する形で収容される。嚮導機側のアンカーを展張してカタパルト側のラッチに繋ぎ引き込むというプロセスだが、本編で書かれているように、機体と母機の遷移空間を完全に同期させて融合、その間もドライブモーター/遷移空間切断機はその出力を調整して同期を維持する必要がある。しかも近傍に質量が存在すれば(すなわち、この場合は主に前哨機(ピケット)の質量)それによる擾乱が同期を阻害する、という条件下での作業であり、慎重を要しなおかつ時間も必要とする。

    • リロード

       啓開/嚮導機が通常の船外作業で必要とする物資は、少量の、パイロットが必要とする生命維持素材と、主には叉骨に搭載される補機・対消滅機関が要する反応物質となる。反応物質は原則として元素の種別を選ばないが、啓開/嚮導機に於いては機内容積を考慮して通常、水銀/反水銀の組み合わせを用いる(他の作業機では、扱いを容易とするよう、水を使用)。それらを補給する作業を、ここでは指す。

    • レール・カタパルト

       前哨機(ピケット)の舳先に二基が設けられている、啓開/嚮導機を打ち出すための軌条。宇宙船が用いる投射システムとしては、慣性制御を用いる装置が一般的であるが、ギュンター、およびヘルダその他が装備しているのは空間操作を直接用いる加速機構。もちろん、きわめて重い機体を超高速で射出するためである。

    【わ】

    • わずか3秒で

       基底空間操作/超弦励起光波機関(サブストレート・エクストラクタ)は、そもそも停止することがない。超空間内に在って一瞬も安定することなく励起/消滅を繰り返す基底空間振動から直接エネルギーを汲み出すシステムの性質上、最小出力で作動し続けることを必要とする機構であり、パワープラントを立ち上げることはすなわち、「ストッパーを外す」ということに近い。それも、機関の励起状態を活性化させるために補機・対消滅機関を起動し立ち上げるのに要する時間がその殆んどを占める。

    • 湾曲した背骨

       嚮導機、もしくは啓開/嚮導機の基幹構造を成す、文字どおりの背骨。空間操作による偽物質によってそのほとんどの部分が成形されており、機体構造の中ではもっとも頑丈・強固。というよりも、通常の手段で破壊することは原理的に不可能。ただし、この偽物質は、根本的にトポロジー制約があるため、単純な形状しか作れず、きわめて重く、また自己交差することはできず「内部に何かを組み込む」こともできない。ために、適用できる箇所は、概ねメインフレーム(の一部)と、格闘腕の基幹骨格、斬撃・投擲用ブレードなどに限定される。